「新宮弁の基本構造」についての考察と「大阪弁に近づいたらアカン」

今回は新宮弁講座の補習講座として、南紀熊野地方の言葉の特徴・基本形を考察し、合わせて「似て非なる」というか「非て似なる」大阪弁に近づいたらアブナイという、緊急アピールを行いたいと考えます。

東京弁や名古屋弁は、感染しても基本構造が全然違うので、新宮弁の基本がオカしくなるということはありません。しかし、大阪弁は似ているだけにヘタに近づくと新宮弁がメルトダウンを起こし、根こそぎ「持っていかれる」恐れがあります。

大阪弁とは一線を画し、新宮弁を守らねばなりません。和歌山弁や伊勢地方の言葉も同じく要注意です。出来れば吉本興業あたりに新宮弁を売り込みたいところですが、敵はなかなか手ごわいと考えます。

「いてまえ」言うたらアカン。「知っちゃあらよ」言うたらアカン。「あるでナー」言うたらアカンということです。「いてまえ」は「やりまくったれ」又は「ばちきったれ」と言いましょう。「知っちゃあらよ」は「知ったぁる」。「あるでナー」は「あるデ」で止めるべき。ま、こういうことです。

それでは、新宮弁の基本構造について見ていきましょう。

●二大基本表現

1)「やる」

しやる、言やる、食べやる、見やる、来やる、行きやる、走りやるetc。いっぱいありますね。「言よる」とか「走っちょる」という言い方は四国、九州方面で聞くような気がしますが、「やる」は日本のどこかで使われているのでしょうか。私は聞いたことがありません。もしかして熊野オリジナルかも・・・。この一大特徴を守りましょう。

ゆえに禁句は「言うとる」「食べとる」や「見てまっせ」などです。「知っている」とか「食べとるでな」とか言っている分には、新宮弁のアイデンティティは保たれますが、「知っとるやんか」となった途端にアブナイ、アブナイ。新宮弁は浸食されます。新宮人なら「知ったぁるゲー」と言いましょう。熊野っ子なら「知ったぁーらい」と言いましょう。

2)「たぁる」

知ったぁる、飲んだぁる、生きたぁる、書いたぁる、来たぁるetc。「やる」と並んで熊野語の根幹をなす表現です。禁句は「生きとる」「来とる」などです。

「やる」も「たぁる」も上品であるかオシャレであるか、私には何とも言えませんが、いつか必ず流行の波はやってきます。そのうちテレビドラマで「私、泣きやるの、知ったぁる?」などというセリフが
必ず使われるようになります。必ず!!。その日まで新宮弁を守りましょう。
(*「熊エプ作りやぁる」「駄文書きやぁる」「旅行に行きやぁる」「写真も撮りやぁる」「下手な英語もしゃべりまくりやぁる」「酒も飲みやぁる」「恥もかきやぁるで」・・・・私の日常です)

3)その他

「やる」と「たぁる」が新宮弁の特徴・二大基本用語であると考えますが、その周辺にもキラキラ輝く、熊野風味あふれる言い回しがたくさんあります。「やだ」「わだ」「のし」「んし」「げー」「なぃ」「なん」「な」「よぉ」「のぉ」などです。語尾にこれらの言葉をつけるだけで、もうあなたは熊野人。

いずれも捨てがたいニュアンスを持ってますが、なかでもこれぞ熊野オリジナルと思われるのが「やだ」「わだ」ですね。NHKの朝ドラ「ほんまもん」でもこの言葉が多発されていました。山中定道役の佐藤慶さんが「この辺では、それが普通やだ」とか「よう、やったわだ」などと喋っていました。ちょっとヘンなアクセントやったけどの。

「そうや」の大阪弁と「そうだ」の東京弁を合わせて、「そうやだ」の新宮弁。いやはやゴージャスですね。2倍の強調度があります。「わだ」については、ある大阪のいとはんが「言うたわだ」という言い方が面白かったと、それはそれは言っておりました。

「言うたわだ」。東京弁では「言ったのに」や「言ったじゃない」。大阪弁なら「言うたやんか」あたりと思いますが、「言うーたわだ」の語感は出色の出来。自己主張の強さと、責任を人にスリスリなすりつける気分がよく出ています。あな恐ろしや熊野人。

「私のこと、好きや言うたのに」くらいなら、まだ2人は修復の可能性がありますが、これが「言うたわだ」となるとアブナイ。「言うたわだヨー」から「言うたわだヨー、もう」となると、これはもう2人は大浜か二の丸、または神倉山で別れます。

いや、「別れの広角(ひろつの)」やろか。いや「涙の桧杖(ひずえ)」。はたまた「泣いて成川」「Hold me登坂(とさか)」。「So sad橋本」。うーん、どれもツライのぉ。

ブッシュ、シラク両大統領も「言うたわだ」という言葉を知っているそうです。大量破壊兵器や生物・化学兵器が出てきても、出てこなくても、どちらかが声を大にして言うことでしょう。

「言うたWADAヨー、MO-!!」

CNNやアルジャジーラ放送が世界中に発信します。「言ーたわだ」が国際語になる瞬間です。しかし、何という不幸なデビューであることでしょうか。でも、それがこの言葉の持つ宿命なのかも知れません。「言うたわだ」には不穏な何かがつきまとっています。鳴乎、「言うたわだ」。補習講座のつもりが本講座風になってきてしまいました。この際、本講座に切り替えて、次回も周辺用語について見ていきたいと思います。

講師:城C坊先生